退職してフリーランスになるITエンジニアが賠償責任保険を比較する
フリーランス(個人事業主)は無限責任です。もし訴えられて裁判に負けて数百・数千万円の損害賠償が発生したら、全額支払う必要があります。下手すれば自己破産。甚大な金銭的ダメージを負うリスクは可能な限り減らしたいですよね。
IT エンジニアが会社員からフリーランスになるときは、以下の 2 点について検討が必要だと思います。
- 損害賠償請求をされないように気を付ける
- 万が一のため賠償責任保険に入っておく
まず、損害賠償を回避するための 4 つの対策を考えます。
次に、賠償責任保険の 3 つの選択肢「フリーナンスを利用する」「フリーランス協会に加入する」「保険が自動付帯するエージェントを使う」を検討します。
損害賠償が発生する事態を回避する方法
賠償責任保険をかけたとしても、損害賠償なんて起こらないに越したことありません。メンタルはすり減るし、時間はなくなるし、評判は落ちるし。良いことなんてひとつもないはず。
損害賠償を回避するため、 4 つの対策を考えました。
機密情報を外部に漏らさない
クライアントからお仕事を業務委託されたら、機密保持契約を結ぶ場合が多いと思います。機密情報・個人情報を外部に漏らしてはいけないという契約です。
機密情報が流出してクライアントのサービスの評判が落ちたり、競合他社にノウハウが渡ってしまったりすると、損害賠償を請求される可能性があります。
情報が漏れるのを防ぐための対策はいくつか考えられます。
- 業務用 PC と私用 PC を分ける
- PC やスマホにパスワードをかける
- ディスクドライブを暗号化する
- 最低限のアプリケーションのみインストールする
しかし、わざとじゃなくても外部に漏れてしまう可能性はゼロではなく、リスクもゼロにはなりません。
- メールの送信先を間違える
- ファイルの権限設定を間違える
- PC を紛失する
- PC がウイルスに感染する
善管注意義務を怠らない
作業に応じて報酬が支払われる準委任契約の場合、善管注意義務が発生します。
「業務委託契約締結における留意点(雇用との違い)」に載っている準委任契約の説明がわかりやすいと思ったので引用します。
- 当事者の一方が「法律行為以外の事実行為をする」ことを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することを内容とする契約。
- 受託者の義務は「仕事の完成」ではなく「行為(受託業務)」をすること
- 定めがなければ、いつでも依頼の撤回(解除)ができる
- 受任者は善管注意義務を負うが、瑕疵担保責任はない
成果物を完成させる義務はありませんが、IT エンジニアとして通常気づくであろう欠陥を見過ごしたために不具合が生じた場合など、善管注意義務違反を問われる可能性があります。
善管注意義務を果たすための対策は 2 つあると思います。
- ハードルを不必要に上げない
- スキルアップを心がける
クライアントの期待に応えるためには、求められる期待値の調整と、要求水準を満たすための努力が必要です。
問題なく納品する
請負契約の場合、以下の責任が発生します。
- 債務不履行責任
- 契約不適合責任(瑕疵担保責任)
「業務委託契約締結における留意点(雇用との違い)」に載っている請負契約の説明を引用します。
- 当事者の一方が「ある仕事を完成する」ことを約束し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約束する契約。「仕事」とは労務の結果により発生する成果物を言い、有形・無形は問わない。
- 「仕事の完成」義務がある。やり方については、注文者からの指図がなければ請負人の判断による(但し、請負人が指揮命令をすることはできない)。
- 成果物に瑕疵があったときは、瑕疵担保責任を負う。但し、注文者からの指図に瑕疵があったときは、請負人に責任はない。
債務不履行責任とは、「ある仕事を完成する」という約束を果たす責任です。見積もりが甘かったとしても、納期に遅れないように完成させなければいけません。
契約不適合責任とは、仕様を満たす納品物を瑕疵なく作らなければならないという責任です。仕様と違っていたり、バグがあったりしたら修正する責任があります。
ヘタをすると時給が最低賃金を下回るかも。納期遅延・バグがクライアントの業務に大きな影響を与えると、損害賠償を請求される可能性もあります。
バグが多くて納期に遅れそうなときは、クライアントとコミュニケーションをしっかり取りましょう。早めに頭出し・調整しておけば、ある程度問題を抑え込めるはず。
著作権を侵害しない
著作権侵害として考えられるのは、自分が著作権を持っていないソースコードを使ってしまうケースです。著作権をクライアントに譲渡する契約で書いたソースコードを流用したら、それは著作権法違反です。
それから、ライブラリを使う場合はライセンスに気をつけましょう。
例えば、ライセンスがコピーレフトなライブラリを使ったら、ソースコードを公開しなければなりません。でも、OSS の開発でもない限り、クライアントはソースコードを公開したくないはずです。
ライブラリのライセンスが開発の終盤や納品後に問題となった場合、別のライブラリを使うように修正したり、ライブラリ部分を自分で作る羽目になり、納品の問題につながります。
著しく不利な契約を結ばない
クライアントと契約を結ぶときは、契約書案を自分で読んで不明点を確認しましょう。
もし不安がある場合、契約書のリーガルチェックを行政書士や弁護士に依頼します。ただ、リーガルチェックはどうしてもそれなりに費用が発生します。安く済ませたい場合は、不安な箇所について弁護士ドットコムやコクリエなどで相談もできます。
IT エンジニア向けの賠償責任保険を用意する
いくら気をつけていても、不幸が重なり損害賠償請求される可能性はあります。備えとして賠償責任保険を用意しておきましょう。
ただし、保険には支払い上限金額があるため、莫大な損害賠償になれば対応しきれません。どれくらい手厚く保険を用意すべきなのかは、業務内容やクライアントによるかと思います。エイヤっと決めましょう。
フリーナンスを利用する
FREENANCE(フリーナンス)は、「フリーナンス口座」を作れるサービスです。GMO ペパボ株式会社が運営しています。
フリーナンス口座はあなただけの収納代行用口座です。あなた自身の名前で開設し口座維持手数料 0 円でお使いいただけます。フリーナンス口座に振り込まれたあなたへの報酬は毎週1回、あなた自身の口座に振り替えられます(振込手数料も当社負担です)。
このフリーナンス口座を作るだけで「あんしん補償」という賠償責任保険に入れます。
あんしん補償は、お仕事中の事故や納品物の欠陥を原因とする事故の補償(最高 5,000 万円)だけでなく、情報漏えいや著作権侵害、偶然の事故による納期遅延などを原因とするフリーランス特有の事故の補償(最高 500 万円)を行います。
「フリーナンスあんしん補償の概要 」に詳しい説明が書いてあるので読んでみてください。
ただし、「クライアント企業(法人限定)からの事業報酬の入金」が継続的に発生しないと、あんしん補償が適用されなくなります。フリーナンス口座を作っても放置しておいたらダメです。
ログインしたら「このアカウントは現在休止中です」と表示されます
フリーナンスでは、サービスの利用に際し、継続的なフリーナンス口座の利用をお願いしています。一定期間にわたってフリーナンス口座の利用が確認できない場合、 会員ステータスが「休止中」という状態に変更されます。 また、休止期間中はあんしん補償は適用されません。
事業用の報酬入金専用口座として用意すれば賠償責任保険が無料で付帯するため、とても使いやすいと思います。
フリーランス協会に加入する
年 1 万円支払ってフリーランス協会の一般会員になると、賠償責任保険に入れます。
会員特典/フリーランス協会だけの福利厚生。賠償責任保険や所得補償、健康診断優待、会計税務・法務サービスなど
業務遂行中の対物・対人の事故だけでなく、情報漏えいや納品物の瑕疵、 著作権侵害や納期遅延など、フリーランス特有の賠償リスクに備え、 国内初の幅広い補償を実現! 大手保険会社 4 社による共同保険で、 一般会員はもちろん、発注主も補償対象となるため、 安心して業務を発注してもらえる点も大きなメリット。
有料ですが、福利厚生など色々なサービスも一緒に使えます。ちょっと使えるサービスが多すぎて把握するの大変です。。。
大手企業も導入する福利厚生サービス「WELBOX」が一般会員は第二親等まで利用可能。全国 3,000 施設の健康診断や人間ドックの割引、スーパー銭湯やマッサージなどのリラクゼーション、e ラーニング、子育て支援、税務・法務相談のほか、映画やカラオケなどのレジャー、グルメやショッピング、出張にも便利な旅行関連の優待など、多彩な特典をお楽しみいただけます。
フリーナンスが使えないとき、保険を手厚くしたいときに利用を検討しましょう。
賠償責任保険が自動付帯するエージェントを使う
エージェントを利用して参画案件が決まったとき、賠償責任保険が自動付帯する場合があります。
Workship でご成約すれば無料で賠償責任保険が自動付帯されるので万が一のときも安心です。
IT 業界の人手不足を反映してかエージェントの選択肢は多く、比較の観点として賠償責任保険の有無が重要かと言われると怪しいです。もしエージェント選びに迷ったら気にしてみるくらいの感じが良いかなと思います。
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